信じられない状況だった
覚えているのは私が高校からの下校途中誰かに不意に後ろから
羽交い締めにされ口にハンカチの様な物をあてがわれて急に眠気に襲われた所
までだった
持っていた学生鞄と履いていた靴が無造作に壁際に投げ出されていた
着ていたセーラー服は脱がされていない 股間に異物感はない
性的に犯された様子はなかった
人の気配のまるでしない薄暗い部屋・・・
どこかの撮影スタジオに私は一人置き去りにされた様だ
−・・・誰が何の為に・・・これから何が起こるの？！・・・−
ただ一つ判っているのは私の体が 十字架状に 両腕・両脚はそれぞれ
手枷・脚枷で胴体は臍を挟んで上下２本の頑丈な鎖でしばりつけられて
ベッドに固定されていて身動きひとつ取れないという事だった
首だけは自由に動かせる為に周りの状況を見てとる事だけはできた
そして自由を奪われた私のこの体にこれからおこる惨劇を
克明に記録するつもりであろう 数台の無人のビデオカメラが私を取り囲んでいた
私の胴体のちょうど臍の真上を横切る位置にレール状の鉄の棒がセット
されていた そして背中側にはレールに平行する様に細長い材木が
あてがわれている様だ
そしてレールの先 私の右手側上方には 直径９０ｃｍは有りそうな大きな
回転鋸が用意されていた それは人体を切断するには充分な大きさであろう
私の胴体を挟むような形で用意されているそれは間違いなく私を切断する為の
回転鋸のガイドレールであった
まるで大魔術の美女切断の舞台の様だが違いが有るとすれば
そこには観客もマジシャンも居ない そして 文字どうりマジックのタネ
も仕掛けも無いという事であろう 私の本物の胴体はベッドの下でもなく
脇でもなく本当にレールと材木の間に挟まれていた
全てはリモコン操作で行われている様だ
私が意識を取り戻す時を待ちかねていたかの様に
誰もいない部屋で急に回転鋸が回転を始める
私の右側上方に位置する回転鋸の刃は次第に下がってきて
ある高さでピタリと固定された
私の胴体の１／３位の深さまで切り込める高さだった
まだ致命傷には至らない−助かるかも知れない−高さに合わせられた様だ
むしろその微妙な高さ調整がいまの状況が遊びや脅しではない事を示していた
そしておもむろに回転鋸は私のセーラー服姿の胴体に向かってスライドしはじめた
必死にもがきなんとか避けようとするが私の両腕 両脚 胴体はしっかりと
固定されていてどうにも動けない
ゆっくりとしかし確実に回転鋸は私の胴体の右側から切断を開始する
「グギャァァァァァ！！」悲鳴にならない悲鳴
”まさか・・・”という願いにも似た甘い考えが完全にうちけされる
巻き込まれ引っ張られ切り裂けるヒダスカート
布と肉を切り裂く鈍い音が混じり始める
飛び散る血飛沫、肉片
たちまち血に染まる回転鋸
回転鋸の風圧になびくセーラー服の薄いスカーフ
失禁したのであろう スカート中央に染みが広がっていく
性的興奮を伴って意志とは無関係に濡れていく股間
−・・・どうして私が？・・・−
強烈な痛みが実際に私の腹部に回転鋸がくい込んでいるのだという事を
証明している
これはマジックではない 特殊撮影でもない 何者かの冗談や狂言でもない
否定しようのない痛みが 避けようのない痛みが 私を襲う
昨日までごく普通のありふれた女子高生として生活していた私が
いま何者かの手によって回転鋸でセーラー服姿のまま実際に切断されている
変質者の快楽殺人？ スナッフビデオの撮影？ 理由はどうでも良かった
理由が判ったところで納得できる訳もない 回転鋸は情け容赦無く
私の胴体に強烈な痛みを伴いくいこんで来る それは退け様のない現実だった
腹部を切り裂きながら私の左側まで移動を終えた回転鋸はその場で再び下がり始めた
今度は私の胴体の２／３の深さまで切り込める高さに合わせられた様だ
そして再び私の胴体を切り裂く為に右に向かってスライドしはじめた
先ほどは腹部の表面を切り裂く事しかできなかった回転鋸が
内臓深くまで切断しはじめた−もう助からない−絶望という言葉が脳裏をよぎった
「は、は、早く殺してぇ！・・・ ゴフ！！」
内臓が傷つけられたからか体内から口の中に血液が逆流する
あふれかえった血液がかまわず口から吹き出る・・・
耐え様のない痛みに絶え間なくさらされる胴体 回転鋸が胴体中央まで食い込み
私の視界一杯を覆う頃には もはや私は すぐにでも死にたかった
助かる見込みは もう無い 悔しくて涙があふれていた
この痛みから逃れる為には死んでしまうしかなかったのだ
不思議な事に回転鋸はもう胴体のかなり深くまでくいこんでいるにもかかわらず
気を失う事もできず 死ぬ事もできず 腹部のかなり奥深い部分から伝わって来る
ドクンドクンと脈打つ鼓動と 切断面で回転し続ける鋸の刃がまだ死んでいない私を
苦しめ続けていた
唸りをあげる回転鋸がセーラー服姿の私の胴体にしっかりくい込んでいる様を
私は見る事ができた その光景はまさしく悪夢としか思えなかったが
妙な性的興奮を伴う１枚の猟奇画の様にも思えた
再度私の右側に移った回転鋸が下がりはじめた
やがてひときわ甲高い音が発生しはじめた 同時に背中に伝わってくる振動
胴体の下に敷かれている材木の右端にくいこみ始めた様だ
それは回転鋸が私の胴体を材木ごと両断できる高さまでおりてきた事を意味していた
回転鋸は材木を切断しながら私の胴体へ向かって左にゆっくりスライドを始めた
３度目の痛みが胴体を襲う
「・・・アゥゥ・・・」
一緒に切断されてる材木からの振動がほとんど切れかかった胴体に響きわたる
今度は背中側から切断されてるかの様な新しい痛みも加わる
回転鋸はセーラー服に包まれた胴体を完全に両断すべく情け容赦無く
右脇腹からくいこんで来る
無意味な事を承知で右腰の側を上げる様に体をそらし右胸越しに
自分の胴体に真横からくい込んでくる回転鋸を凝視する
既に２／３を切り裂かれた切断面から止めどなく流れる真っ赤な血液と
やぶれたスカートからはみ出している自分の下半身側の内臓を私は見てしまった
−・・・どうしてこんな目に合うの？・・・−
納得しようのない 怒り 悲しみ 何より生きたまま切断されていく強烈な痛み
私はこんな形で急に死を強制される現実を理解できないでいた
既に耳鳴りで聴力は半分失われていた 目は見開かれているが黒いマスクに
覆われていく様にだんだん視界が暗やみに閉ざされつつあった
切断される側の状態に関係なく無情にも切断を続ける回転鋸・・・
いっそう甲高い音が加わり始めた 回転鋸はとうとう背骨に食い込み始めた
いままでとは比較にならない痛みが脳髄を直撃した
「・・・アァァァ！・・・」断末魔の悲鳴、痙攣する全身
一瞬昨日までの自分の全生涯が脳裏をよぎった気がした
背骨が切断された刹那 私は即死した
私が死んでしまった後も撮影は淡々と続けられた
回転鋸は尚も回転を続け私の胴体を横切り左側へ抜ける
やがて私の胴体を 下にしかれている材木ごと真っ二つに切断をし終わると
充分な血に染まった回転鋸は満足したかの様にようやくその動きを停止させる
急にしずまりかえるその部屋には血生臭い匂いが立ちこめていた
切断面と平行に飛び散った血飛沫がまるで腹部を縛る一本の赤い紐の様だった
既に肉塊と化した上半身、下半身は見事に臍のあたりから両断されていた
下校途中という事を物語るセーラー服が痛々しい
切断面からは鮮血にまじって寸断された小腸の塊や体の脇の方をとおる
大腸の断面がはみ出してこれがフェイクやマジックでない事を証明していた
脚は最後の痙攣の時に固定していた足枷によって無惨にも深いすり傷で
表面の皮がはがれていた
スカートに隠れて見えないが恐らく脱糞しているであろう
顔は口から溢れた血液で血まみれ 焦点の合わなくなった目は涙であふれ
動かなくなった表情は 断末魔の苦しみをそのまま物語っていた
私の命が断たれた瞬間はこうして全てビデオに納められた
「惨殺！！輪切りにされたセーラー服」のタイトルで
本物の日本製スナッフビデオとして極少数が闇のルートで販売された
それが 快楽殺人の副産物で有るのか 最初から殺人ビデオの作成が
目的であったかは もはや私にとって知る必要もなかった
私の家族からは警察に行方不明の捜索願いが出されていたが
数ある未解決の蒸発事件の内の一件にすぎなかった
画面にモザイクやぼかし処理がされてない為両親や警察がビデオを
みればすぐに判っただろうが そんなに簡単に手に入るビデオでもなかった
なによりも私の死体は巧妙に処理された様だ