突然の発砲音
右腕を銃弾がかすめる
−・・！？ 本物？−
焼けつくような痛みが右腕にはしる
私は自分の目を疑った
切り裂かれた皮膚のその下には真っ赤な血にそまった
肉塊が見えていた
思いの他深く抉られた傷口からとめどなく流れ出る血・・・
自分は今 試運営中のアトラクションのバーチャルシアターにいるはずだった
ふとしたはずみで招待状を手に入れた私はモニターとして参加してるつもりだった
それなのにどうしてこんな事が起こるのか理解出来なかった
自分の体から流れ出る血や例えようのない痛みはとても仮想体験とは思えない
次第に迫り来る銃を持った迷彩服姿の兵士達の威圧感と焼けつく様な傷口の痛みに
私はその場にへたりこんで身動きがとれなくなってしまった
不気味な威圧感で近ずくその者達は
セーラー服姿の私をもてあそぶ様に一発また一発と至近距離に銃弾を撃ち込む
この場で直接撃ち殺す気はないのか恐怖と苦痛に脅える私を見て楽しんでいるのか
わざと狙いをはずしているようだった
鼓膜がどうにかなってしまいそうな壮絶な発砲音と
頬をかすめる銃弾の風圧がそれが間違いなく実弾で有ることを証明していた
−どうして？なにが起こっているの？・・・−
何も理解できないまま 突然私の両脇から不意に現れた２人の迷彩服姿の兵士に
左右の腕を捕まれ連行される
抵抗しようと思う間もなく事態は悪夢の様に展開していた
ほどなく士官らしい軍服姿の者が現れた
「よし 捕虜を一番目立つ丘の上のくさびに縛りつけろ！
敵軍への見せしめの為に銃殺だ！」
−そんな！・・・−
何がどうなっているのか理解できない状態のまま
何の抵抗もできない私に絶対的な死の宣告が告げられる
死を宣告されたセーラー服に情け容赦なく縄が食い込む
必死に逃げようとするが数名の人間に押さえられていては
全く身動きがとれない
手にしてる銃はもちろん今までの展開から考えて
エアガンや模型の銃器で有る可能性はほとんど無いと思った
がたがたと身体の震えがとまらない
恐怖で自然とあふれる涙
こんなことでこんなに急に死を強制される事を
私でなくても誰がすぐに受容できるだろうか？
「狙え！」
なんの躊躇も無く いくつもの銃口が私を狙う 今度は脅しではない
冷酷にも銃口は正確にセーラー服姿の私の身体を撃ち抜く位置に狙いをさだめている
その銃口から発射される弾はもはや疑いも無く実弾であろう
−やめて！！そんな事したら死んじゃう！−
標的になっている私にはもちろん死は絶対的な恐怖であった
しかし銃をかまえ狙っている側にとっては殺される側の恐怖は判らない
緊張に包まれた刹那をむしろ軽い興奮と共に冷酷に楽しんでいる様であった
「ってぇ！」
空気を圧縮する鈍い狂気を伴う音とともに
体のあちこちに信じられない程の痛みが炸裂する
痛みの直後から視界全体にスローモーションがかかった様に
一部始終が見えていた
実弾がセーラー服姿の私の胸に肩に腹に脚に着弾する
服を皮膚を肉を細胞を破壊しつつ 体じゅうにつきささってくる銃弾
反動で弾け飛ぶ肉塊ちぎれ飛ぶセーラー服の布地
視界一杯に広がる血飛沫
穴だらけになってしまったセーラー服の下から
とめどなくあふれ出る血液が
逆流して口からあふれ出る血が
セーラー服を真っ赤に染める
目に見えない無数の剣で体中を刺し貫かれたままになっているかの様な痛み
呼吸が乱れ身体の震えが止まらない
・・・
胸に着弾した銃弾に心臓を撃ち抜かれたか心臓の鼓動も感じられなくなった
急速に視界は目を見開いているにもかかわらず闇にとざされ
耳鳴りが聴覚を妨げる様に何も聞こえなくなっていった
すでに呼吸も失われていた
痛みだけが最後まで残っていた
やがてその痛みも・・・
